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名古屋地方裁判所豊橋支部 昭和38年(ワ)47号 判決 1965年2月12日

主文

(一)  被告は原告に対し金四拾万五百参拾弐円及び之に対する昭和三十七年一月六日以降完済に至る迄年六分の割合による金員を支払うこと。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

(三)  原告が被告に対し金壱拾参万円の担保を供する時には本判決は主文第一項に限り仮に執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は主文第一、二項同旨の判決並び仮執行の宣言を求め、請求の原因として、

(一)  原告は金融を業とする者、被告は毛糸類売買を業とする者である。

(二)  昭和三十六年十二月六日、原告は被告に対しラムアンゴラ毛色八二四キロ六二を価格は四十万五百三十二円、代金支払方法は昭和三十七年一月五日限り豊橋市新本町五十四番地所在の原告出張所宛送金して支払うこと、と定めて売渡した。

(三)  原告会社は金融による営利を目的として商法会社編の規定に基づき設立した会社で商行為を業としないが、商法第五十二条第二項により商事会社とみなされ商人としての商法規定は全部その適用を受けるものである。

したがつて原告会社が金融の担保として受取つた物品を処分する行為は商行為(商法第五百三条)であり、右行為につき委任を受けた者が仮に本人である原告会社のためにする事を示さなかつたとしても、その売買行為は本人たる原告会社と被告会社との間に成立する、(商法第五百四条)

(四)  而して原告は昭和三十六年十二月六日に右物件を被告に対し引渡したが、被告は右代金を支払わぬものである。

よつて原告は被告に対し右売買代金四十万五百三十二円と之に対する代金支払期日の翌日以降完済に至る迄商事法定利率による遅延利息の各支払を求めるため本訴請求に及ぶ、

と述べ、抗弁事実を否認し、

(五)  前述の如く売買契約が原被告間に成立し、而も売買物件は原告から引渡済みである以上、売買代金の支払についてのみ、代理人との間に相殺をなすことは被告会社が善意であつてもできぬものである。

と反駁し

立証(省略)

被告訴訟代理人は請求棄却の判決を求め答弁として、請求原因事実中(一)は認める、(二)は否認する、他はすべて之を争う、

と述べ、

(一)  被告が昭和三十六年十二月六日ラムアンゴラ毛糸八二四キロ六二を買受けた事は間違いないが売買契約の相手方である売主は豊橋市に本店を有し東京銀座に事務所を有する訴外白井通商株式会社であつて原告ではない。

只代金支払場所として原告方を指定された丈で売買代金に関する債権債務は被告と白井通商との間に発生しこれが債権を譲受けたとの通知もない以上被告が原告に対し代金支払義務を負う筈がない。

(二)  代金は弐拾四万参千壱百円、代金支払期日は昭和三十六年十二月中と原告は主張するが値段は被告に一任、代金支払期日は二十日締切翌月五日払の約であつた。

而してラムアンゴラ<省略>の糸は高度の紡績技術を要するものであり原糸不良による損害は一切売手の負担とする旨の特約があつた。

しかるに受領の糸は倉紡約六二六キロ、中島毛糸約一七四キロ合計約八〇〇キロで後者は外箱が破れ中身が見えている状態であつた。

品質については糸管巻きの生成の色が違い糸むらあり糸管の大小ありで又編立を始めると糸番手の不同、切れそうなところがある等種々の問題がおき完成な契約品の製造が不可能視されるに至つたが、既に輸出契約を結んでいるため生産をやめる訳にもいかず、又交換すべき糸もないところから最善を尽し損害を最少限度に抑えるよう白井通商より依頼があつた。

従つて色むらに関してはバイヤーと連絡し値引により色を濃色と晒に限定することに諒解をとり封度当り四百円までの了解のもとに代金を次の通り決定した。

八二四キロ六二×二・二×四〇〇円=七二五、六六五円

原糸不良による分止り不良二割引    一四五、一三三円

原糸不良による加工賃増額分

三〇〇ダース、一ダース分六〇〇円  一八〇、〇〇〇円

以上差引    四〇〇、五三二円

(三)  当時被告は白井通商に対し四一九、七五〇円の売掛債権を有していたので昭和三十七年一月末頃これと対等額で相殺する旨の合意が成立したので被告は白井通商に対しても代金を支払う義務がない。

(四)  仮に右合意が成立していないときを考え念のため被告は昭和三十八年六月二十九日到達の内容証明を以て右を対等額にて相殺する旨の意思表示をしたので前同様被告は白井通商に対しても代金を支払う義務がない。

と反駁した。

立証(省略)

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